日本ラグビー界の至宝・田中史朗選手が引退を表明 身長166センチの日本代表はどうやって「小ささ」と向き合ったか?
日本ラグビー界に偉大な軌跡を残した田中史朗選手の思い
■「小さくてもできる」。常にプラス思考で邁進
自分の中で「小さくてもできるんだ」という、手応えをつかんだ試合があります。2007-2008年シーズンのトップリーグプレイオフセミフィナル・東芝戦。ぼくのパスミスが原因で決定的なトライをとられてしまいます。「もう負けた」と思いました。そこでトニー・ブラウンが「顔を上げろ。まだ終わってないだろ」と喝を入れます。自分のミスは自分で返さなきゃと、気合が入ったぼくは、その後相手ウィングのトンガ人選手を一発のタックルで倒すことができたんです。彼はゴツくて、ボールを持ったらトライ…という選手でした。結局試合は最後、トニー・ブラウンがダメ押しのトライを決めて勝利。この試合でぼくは「小さくてもしっかり体を当てればできるんだ」という手応えをつかめました。
ラグビー王国、ニュージーランドもじつは小さい選手は多いです。たとえばスーパーラグビー・ハイランダーズで同じ9番の座を争ったアーロン・スミス。彼は身長170センチあるかないか。同様にスーパーラグビー・サンウルブズにいるジェイソン・エメリーも小さい選手ですが、センターとフルバックをこなし、決してパワー負けしません。彼らは「小さいから」という言い訳をしない。そのかわりに、とにかく一所懸命トレーニングします。他のスポーツを見ても、ボクシングの井上(尚弥)選手、サッカーの長友(佑都)選手など小さくても世界のトップクラスにいる選手が沢山いる。
人より背が小さくたって、関係ない。サイズがないのであれば、そのサイズでできることをやるだけ。ぼくの場合はかわりに、スピードをつけたり、考えてプレーするようにした。いまなにかコンプレックスを抱えている方も、そこに悩んでしまうよりは、じゃあ自分には何ができるか?とプラス思考で向き合ってみてはどうでしょうか。そうすれば、もっといい自分が見つかるはずです。
文:BEST TIMES編集部